こんにちは、
分子栄養学アドバイザーの勝田です。
食べるだけで痩せる!
食べても高血糖を起こさない!
そんな夢のような方法があったら
どんなに良いだろう
これは飽食の現代を生き
食後高血糖やダイエットに日々悩む
多くの人々の切実な願いに
違いないでしょう…
数年先の未来ではこんな夢のような
話しも決して不可能ではないかも?!
そんな風に思えるテーマで
今日はお届けいたします。
ダイエットの鍵は胆汁酸とノミリン
今日ご紹介する
ダイエットや血糖値に関わる物質は
『胆汁酸』と『ノミリン』です。
胆汁酸は、オーソモレキュラーアカデミーの
分子栄養学アドバイザー養成講座の中でも
度々登場していましたね。
胆汁酸と聞いて真っ先に思い浮かぶのは
脂肪のミセル化の役割です。
アブラと水は混ざりませんが
乳化・ミセル化されると混ざります。
マヨネーズを作る時はお酢とアブラに
卵黄を入れると混ざりますよね?
まさに胆汁酸の役目は
マヨネーズ作りに欠かせない
卵黄のような役目!
ミセル化されることで脂肪の消化吸収を
促進してくれています。
一方でノミリンは
はじめて耳にする方も多いと思います。
ノミリンとは柑橘類に含むファイトケミカルで
苦味物質(リモノイド類)のひとつです。
(なかには苦くないリモノイドもあるそうですが)
リモノイド類にはリモニンやオバクノンなど
様々な種類があり、ノミリン(Nomilin)も
リモノイド類の一種という事になります。
ノミリンは柚子やダイダイなどの
果肉よりも種子中に多く存在しており、
強い苦みから商品価値を下げるとされ
捨てられることが多いそうなのですが
ノミリンには抗肥満効果などの生理活性が
あることが近年では分かっています。
胆汁酸とノミリンについて
少し分かってきたところで
この胆汁酸とノミリンがどう凄いのか?
ここから更に詳しくみていきたいと思います。
胆汁酸の働き
前述したように胆汁酸にはミセル化による
脂肪の消化吸収を促進する働きがありますが
胆汁酸の働きは実はもっと奥が深く
ダイエットにも非常に関わっていることが
分かっています。
脂質の消化をサポートする事からも
胆汁酸はこれまで”ただの消化液”のように
考えられていましたが、
それは胆汁酸にとって失礼極まりないことが判明
(もっと様々な働きがある事が分かってきたのです)
胆汁酸の働き
脂質の吸収のサポート
界面活性(腸の洗浄)
解毒作用
コレステロールの調整
免疫機能
甲状腺ホルモンの活性(エネルギー消費増大)
褐色脂肪細胞の代謝(脂肪燃焼促進)
糖、脂質、エネルギー代謝に関与
このような様々な働きがある事から
今では胆汁酸はただ消化液ではなく
ホルモンのように全身に作用する
生理活性物質のような働きを担っていると
考えられ大注目されています。
脂肪燃焼・エネルギー消費亢進作用から
ダイエット効果も期待できるとの事で
『胆汁酸ダイエット』の名で
一時期大ブームになった事もあるようです。
胆汁酸受容体と抗肥満・食後高血糖抑制
ある研究では、血液中の胆汁酸は
その受容体であるTGR5との結合を介して
<抗肥満、血糖降下作用>を
発揮することも分かっています。
胆汁酸や受容体に関しては
まだまだ解明されていない事も多いそうですが
胆汁酸の受容体にもいくつか種類があり
また、至るところに発現しています。
核内受容体FXRなどは
<肝臓、消化管、腸肝循環経路、腎臓、副腎にとくに発現>
Gタンパク質共役型受容体TGR5などは
<小腸、脂肪組織、骨格筋などのほぼ全ての全身の組織に発現>
なかでも、小腸下部のL細胞の
表面に発現している胆汁酸受容体TGR5に
胆汁酸が結合すると
インクレチン(GLPー1)の分泌が促進されます。
このGLPー1には追加インスリン分泌を
食後高血糖時にのみ促進する働きがある為
脂質を含む食事を摂取した際に胆汁が分泌され
その胆汁酸が受容体TGR5に結合する事で
食後高血糖の防止に繋がるという
有り難い作用があります。
糖質だけの食事より脂質も
合わせて摂取した方が食後高血糖を
起こしづらい事がよく分かります。
さらに、褐色脂肪組織や骨格筋にも
TGR5は発現しており、
これら組織のTGR5に胆汁酸が結合すると
ミトコンドリア活性、熱産生亢進
脂肪酸酸化を増加が起き、これにより
抗肥満効果が期待されると考えられています。
食後高血糖に悩んでいる方
肥満に悩む、痩せたい方にとって
胆汁酸をしっかり分泌させ、
小腸や骨格筋などに分布するTGR5に
結合させることが抗肥満や
食後高血糖抑制に繋がると聞くと
何がなんでも胆汁酸を受容体TGR5に
結合させたくなってきたのは
わたしだけでしょうか?
ノミリンは胆汁酸受容体を活性できる
胆汁酸受容体TGR5の活性のため、
胆汁酸をしっかり分泌させる事は
言うまでもありませんが
実はここで大注目されたのがノミリンです。
ノミリンには胆汁酸と同じように
胆汁酸受容体TGR5を活性化する
強いアゴニストの役目があることが
分かっています。
雄マウスの実験では
9週間の高脂肪食により
肥満にさせたマウスに対して
その後11週の<高脂肪食>
または<0.2%ノミリン含有高脂肪食>
この2つのグループに分けて体重変化を
比較実験したところ、
ノミリン群ではほぼ体重増が認められず
対照群と有意な体重増加抑制が
起きたばかりか、
血糖上昇抑制や耐糖能異常の
改善なども起きたのです。
マウスの実験ではありますが
ノミリンを摂取するだけで凄い効果です。
調べると、ノミリンを含めた苦み成分の
リモノイド類に期待される効果が
(マウス実験によるものもありますが)
これまた、なかなか凄いんです。
リモノイドの効果
抗肥満効果
腫瘍形成抑制作用
抗菌活性
抗HIV活性
抗アレルギー
発がん予防効果
GSTの活性(抗酸化、解毒力)
骨粗鬆症予防 など
柑橘類には多くの機能成分が
含まれていると考えられており
まだまだ研究段階と言われています。
リモノイドに限らず、今後どんな研究結果が
柑橘類の機能成分から飛び出すか
非常に楽しみです。
骨格筋TGR5活性による筋肥大効果
胆汁酸やアゴニストのノミリンが
TGR5活性を介して抗肥満効果や
血糖上昇抑制効果をもたらす可能性に
思わず胸躍りますが、
さらに嬉しい研究報告もあります。
骨格筋でTGR5が活性化すると
筋肥大に関与する遺伝子発現が増大し
筋量増強や筋肥大が起きるというです。
実験ではヒトTGR5を骨格筋に
過剰発現させたマウスで、
大腿四頭筋重量が14.6%も増加し
骨格筋の肥大化・筋力がアップしました。
この分子メカニズムに
どうやら筋肥大遺伝子発現の増大が
関与していたことが分かったそうなのです。
逆にTGR5を欠損させたマウスでは
骨格筋量および筋力の低下が
起きてしまいました。
骨格筋におけるTGR5の活性が筋量にとって
めちゃくちゃ重要であることが伺えます。
こちらもマウスを対象にした
研究ではありますが、筋トレは大嫌い
筋力に自信がないわたしにとって
苦しい筋トレなしに筋量アップなんて
棚からぼたもちです。
また、マウスに運動(トレッドラン走行)を
させると骨格筋TGR5の発現が
増加することも判明しています。
運動が骨格筋TGR5発現を増やすのならば
ただ単に胆汁酸やノミリンで
骨格筋TGR5の活性を促すだけでなく
運動をセットで取り入れることで
受容体(TGR5)自体を増やし、
より相乗効果が得られそうです。
骨格筋TGR5は代謝や
インスリン感受性に対してはほぼ影響を
与えていないことが確認されていますが
それらを介さずに
骨格筋TGR5活性による骨格筋肥大の効果が
糖代謝に大きく影響を与えています。
●骨格筋における解糖系の活性化
(糖を優先的に利用する)
●糖代謝の改善
●肥満や老化に伴う耐糖能悪化を抑制
●耐糖能異常改善 など
この研究では若いマウスのみならず
高齢期マウスにおいても
骨格筋が増大していたことに加え、
ヒトでも十分に考えらる結果だそうで
高齢者におけるサルコペニアの予防や
筋量低下抑制に期待されるとの事です。
骨格筋は血糖を取り込む最大の臓器であり
食後に上昇する血糖の80%を骨格筋が
取り込むとも言われている事から
骨格筋減少は少しでも避けたいところです。
多くの人にとって高齢になるとどうしても
骨格筋減少は避けられないと思います。
すると、老化による筋力の衰えと共に
血糖の取込みも低下し
血糖コントロール不良に繋がってしまいます。
そういった事からも
TGR5活性を介した骨格筋肥大は
血糖コントロールにおいて重要であり、
今後の高齢化社会、および健康寿命に
非常に期待のもてる結果です。
柑橘系を食べるだけでは効果なし?
今日はノミリンと胆汁酸の
ダイエット効果や高血糖抑制など、
健康寿命に関わる効果について
まとめてみましたがやはり
胆汁酸およびその受容体活性は
非常に重要であると感じました。
胆汁酸は体内で合成されますが
ノミリンは植物中に含む苦み成分との事で
外から摂取できるはずです。
しかし、残念な事に柚子や
ダイダイの”果肉”に含む形態では
TGR5の活性が非常に低いとされています。
苦みの多い”種ごと”食べれば
まだ多少の効果があるかもしれませんが
柑橘植物中でノミリンは
初めにノミリンが合成され、その後
オバクノン→最終的にリモニンへと
変換されてしまいます。
※最終物のリモニンにはTGR5の活性を示さないとの事です
どの程度がリモニンに変換されずに
ノミリンやオバクノンとして体内で機能し
効果が得られるか不明ですが、
調べてみると柚子を丸ごとパウダー状にした
苦みのある製品なども売っているようです。
TGR5活性としては
非常に弱いかもしれませんが
蕎麦や冷ややっこに美味しそうなので
夏のこの時期に柑橘の苦み成分を
料理にプラスで試してみるのも
良いかもしれません。
今後、ノミリンやオバクノンの形態で
摂取できるサプリメントや製品開発など、
機能性食品成分として摂取することで
食べ痩せダイエットの実現!
抗肥満や糖尿予防や改善!
サルコペニアの予防など!
健康寿命増進の未来を
期待したいところではありますが、
今出来る事としてはやはり
リカンドである胆汁酸分泌アップ!
この一言に尽きるのかもしれません。
胆汁分泌促進には
杜仲茶やタンポポ茶
ミスクシスル
ハーブ類 (アーティチョーク、クミンコリアンダー、ミントなど)
食物繊維 (水溶性のもち麦など)
水溶性食物繊維は、
新しくて効きの良い胆汁酸を
合成してくれるのでオススメです。
運動が骨格筋TGR5の発現を増やすと聞けば
運動もやはり欠かせませんね。
身体が動けるうちはやはり運動も
多少でも取り入れていくと良さそうです。
ノミリンがまだ先になるのなら
胆汁酸分泌アップとTGR5の発現増加を
わたしもまずは目指したいと思います!
胆汁酸ダイエットブームに続き
そう遠くない未来ではノミリンが
医療やサプリメント業界で
大ブームを起こす日が来るやもしれません。
少しマニアック、且つ
まだまだ研究・開発段階の
お話も含んでしまいましたが
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
参考文献
・胆汁酸受容体 TGR5 活性化による健康寿命の延伸
・リモノイド高含有ペーストの開発とノミリンが
有する骨代謝調節作用
・食と運動が骨格筋を肥大化する
新たなメカニズムの解明-胆汁酸が骨格筋機能を改善する-
・食べる事が動くことに
~食品が代替できる運動機能の可能性~
・血管組織における胆汁酸受容体TGR5およびFXRの機能
他